PDA(携帯情報端末)興亡録
〜電卓からケイタイまで〜
概観
電子手帳と呼ばれた携帯機器が、ある時期にPDA(Personal Digital AssistantあるいはPersonal Data Assistance)というものに変化し、黄金時代を築きました。しかしその後の環境の変転でたちまち存亡の危機に陥りました。PDAの盛衰は電子機器の一般的な運命に共通するものがあり、ここに 一つの歴史として記録しておきます。
PDAの黄金時代は1995〜2000年頃で、インターネットが盛んになりメールやブラウザが一般的になる時代です。通勤通学、外出・出張などで ネットやメールが使いたい人たちにとってノートパソコンは重すぎ、携帯電話はまだ不便でした。そこでパソコンと携帯電話・PHSを結んでネットやメールを自由に使うための道具としてPDAが活躍するのです。
この黄金時代は携帯電話の多機能化、ノートパソコンの小型化でたちまち終わりを告げます。 メーカーの多くは携帯電話の開発協力や多機能電子辞書開発へと転進します。しかし業務用に特殊化したPDAはしぶとく生き残っていますし(株のトレーダー用ツールや商品配送・管理ツールとして各方面で利用されている)、また新しい時代になれば新しいPDAが必要とされるかもしれません。技術者たちはその日を心待ちにしていることでしょう。
電子手帳時代

1970年代、パソコンとPDAの共通の祖先として電卓が誕生します。
電卓の発明者については諸説があり、特定することができません。しかし大量生産品については、4ビットMPUの開発とともに日本のメーカーが主導したのは確実です。(写真はカシオミニ)
MPUの8ビット化、16ビット化とともにパソコンが生産されます。一方で電卓の進化形も追求されました。
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カシオpf3000 |
シャープpax2 |
日本で電子手帳の開発を主導したのはシャープとカシオの2社です。(”電子手帳”という言葉はカシオの商標だそうです)シャープのPAシリーズ、カシオのPFシリーズは市場を二分しました。
共通なのは「高機能電卓・カレンダー・住所録」などの機能で、シャープは内蔵型、カシオはそのつどカードを差し替える方式でした。
PDAのあけぼの
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カシオDK5000 |
富士通オアシスポケット |
HP95LX |
1980年代に入ると電子手帳も進化します。シャープのPAシリーズ、カシオのDKシリーズともにキーボードを備え、液晶画面が大型化しました。中身も大きく進歩をとげ、電卓・時計・カレンダー・電子辞書のほかにPIM(Personal
InformationManagement=個人情報管理ソフト)とよばれる、
* スケジュール/予定表
* ToDo/作業管理
* アドレス帳/住所録
* メモ/手書きメモ/ノート
などの機能を備えるようになりました。
1990年代に入るとPIMを装備した小型ワープロ(オアシスポケットなど)や同じくDOSベースのオリジナルメニューを持った携帯端末(ヒューレットパッカードHP95LXなど)が出現し、それぞれ人気を得ました。
本格的PDA時代
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ザウルスPI3000 |
アップルニュートン |
ThinkPad220 |
1993年には画期的な3つの製品が発売されます。シャープのZaurus PI-3000、アップルメッセージパッド(ニュートン)、IBM
ThinkPad220です。
ザウルスは日本のPDAの代表格となる製品ですし、アップルニュートンはPDAという名前を生み出したアップル社のジョン・スカリー社長が企画した製品です。ThinkPad220はパソコンを携帯端末にした当時としては驚くべき製品でした。このThinkPad220は後継機らしいものが作られず、その不満を吸収する形でHP95LXの後継機HP200LXが人気を博すことになりました。
群雄割拠の時代
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パームパイロット |
NECモバイルギア |
Libretto20 |
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HP200LX |
カシオRX350 |
カシオカレイド |
Windows95の出現を経た1996年、時代を画するPDAとしてPALM(パーム)が発売されました。パームは制限された機能ながら軽快な速度で作動し、モバイルファンの心をつかみました。世界標準のPDAでもあり、PALM社以外にIBMやHandspring社などから互換機が販売されました。
NECからはDOSベースのモバイルギア1、東芝からはThinkPad220を超えるウィンドウズマシンLibretto20が発売されました。
Libretto(リブレット)は広い顧客層を引き付け、「リブラー」という言葉まで出来ました。
カシオからは打倒ザウルスを目標に初のカラー液晶を備えたオピニオンシリーズ(RX350など)やCALEID(カレイド)シリーズが発売されましたが、ザウルスの王座を揺るがすまでには至りませんでした。
この頃までにPDA市場には、オアシスポケットと後継機インタートップ、HP200LX、ザウルス、パーム、モバイルギア、オピニオン&カレイド、ニュートン、さらにPIM機能を内蔵したPHSフォン(NTTパルディオ、松下電器ピノキオ、東芝ジェニオなど)が出現し、群雄割拠の様相になりました。
三国時代
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Zaurusカラーポケット |
カシオペアA-55 |
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モバイルギア2 |
HPジョルナダ |
カシオペアE-3000 |
1997年、Zaurusがカラー化され、インターネット時代への対応を進めます。そしてこの年、時代を画すもう一つの製品が登場します。WindowsCEマシンです。
WindowsCEの第一世代はカシオペアAシリーズとNECのモバイルギアMCシリーズだけで、評判もかんばしくなく、その後すぐ第二世代になりました。カラー化、高速多機能化によってWindowsCEマシンは市場の一大勢力に育ちます。モバイルギア2もカラーCEマシンになり、HP-LXシリーズもjornada(ジョルナダ)に変わってCEマシンになりました。
カシオはキーボードなしのポケットタイプCEマシンで再起を果たしました。
この後、PDA市場は「ザウルス、パーム、ウィンドウズCE」という三つのグループに分かれて争われました。またこの頃にはほとんどの機種で携帯電話とのケーブル接続や、モデムカード、PHSカードを使ったインターネット利用が可能になりました。
転換の時代
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ソニークリエS500C |
ザウルスS-MIE21 |
ザウルスSLC1000 |
2000年、ソニーが満を持してパーム陣営に参加しました。このCLIEシリーズはたちまちパーム機種の売り上げトップに躍進しました。しかしその前年の1999年2月、すでにPDAに対する葬送の鐘の第一弾が鳴っていました。NTTドコモが「iモード」を開始したのです。
iモードは携帯電話のパソコン化に向けた最初の試みで、これ以後PDA陣営は次第に追い詰められることになります。一方ノートパソコンにはネットブック・UMPC(UltraMobilePC)と言われる低価格の小型パソコンが登場し、こちらもPDAの存在価値を落とす役目を果たしました。
ザウルスはこの危機にあたって存在方向を模索し、キーボード付き縦型タイプを経てLinux搭載のSLシリーズに変わり、2008年現在も生産を続けています。(2008年12月生産終了)
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シャープpapyrusPW-TC930 |
ソニーマイロ |
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ノキア6630 |
ウィルコム 03 |
PDA市場の縮小後、各メーカーはPDAでつちかった技術を活かして高機能電子辞書などを開発しています。シャープのpapyrus(パピルス)シリーズにはワンセグ機能のついたものもあり、
マルチメディア機能が充実しています。ソニーはクリエの開発を中止し、代わって独自メニューを持ったMilo(マイロ)を販売しています。
携帯に独自OSを組み込んだスマートフォンは各国で作られており、世界市場ではノキアが優勢です。ノキアのOS「Symbian」はPDA時代に一部で人気のあったイギリスのPSION(シオン)に使われていたOSです。
日本でスマートフォンの代表となったのはシャープの技術提供によって作られたウィルコム社のW-ZERO3シリーズです。これに刺激を受けた各メーカーがそれぞれスマートフォンを販売するようになりました。
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iフォン4 |
エクスペリア・アクロ |
ギャラクシー2 |
ソフトバンクからは異次元の操作感覚を持つアップル社のOSを搭載した「iフォン(アイフォン)」が販売されて話題になりました。最初は話題ほどの売り上げにはなっていませんでしたが、バージョン3〜4になって大幅に売り上げを伸ばしています。iフォンに比べると時代遅れではないか、と言われていたWindowsCE(Windows Mobile)陣営からも対抗馬として「TOUCH DIAMOND(タッチダイアモンド)」が売り出されましたが操作性はiフォンに及びませんでした。それにかわって登場したのがLINUX系のOS「アンドロイド」を装備した「エクスペリア」で、その後各メーカーがアンドロイド携帯販売で追随し、こちらは売上でiフォンに拮抗しています。一方Windows MobileはWindows Phonへと進化しました。こうした技術革新によりスマートフォンがケイタイに不満な顧客を獲得し、新しいPDA世界を創出する流れが出来つつあるようです。
写真は主にシャープ、カシオの両社サイトよりお借りしました。そのほかの写真は各メーカーよりお借りしました。
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